INTERVIEW
「自分らしい生き方」を
かなえている卒業生
~専門的・技術的職業従事者~

「自分の得意」を見つけ、
それを磨いていくことが、
将来の大きな強みにつながります。
慶應義塾大学経済学部准教授 菅澤 翔之助
2003年4月昭和学院秀英中学校入学、2009年3月昭和学院秀英高等学校卒業。2013年慶應義塾大学理工学部卒業。2015年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2018年東京大学大学院経済学研究科論文博士取得。統計数理研究所特任研究員、東京大学空間情報科学研究センター講師・准教授を経て2023年より慶應義塾大学経済学部准教授。
統計科学・データサイエンスを大学で教えている2009年卒業の菅澤翔之助さん。
大学院生の頃にデータサイエンスブームが始まり、
研究と教育を仕事にできる大学教員に魅力を感じ、その道に進んだといいます。
そんな菅澤さんに秀英での学校生活や、これからの仕事の目標、後輩へのアドバイスを伺いました。
Q1. 秀英を志望した理由は?
私は中学から入学したのですが、中高一貫のため部活にも力を入れながら大学受験に向けてゆっくり準備できそうだと思ったからです。実際に、中高を通して部活にはかなり打ち込めました。
Q2. 入学後の雰囲気、授業内容は?
クラスの雰囲気も先生のサポートもとてもよかったと思います。授業は特に数学の進度が早く、中学のうちに高校の範囲まで先取り学習ができる授業内容がよかったです。中学3年生の終わり頃にセンターの数I・Aの問題を解いていた記憶があり、早い段階で大学受験のリアルを体感できたように思います。
Q3. 部活動から学んだことは?
バスケットボール部に所属していたのですが、個人の力だけでは限界があること、そしてメンバー同士がうまくかみ合うと想像以上の力を生み出すことを実感しました。高校時代はキャプテンを務めていたので、自分自身のスキル向上だけでなく、チーム全体にも目を向ける必要があり、それなりに大変だった記憶があります。一方で、社会人になるとこのようなマネジメントスキルは不可欠であり、部活での経験が大いに役立っていると感じます。
Q4. 将来の進路を意識したのは?
数学が得意だったので自然と理系に進んだのですが、高校生になって大学受験を具体的に意識するようになってから「どんな学部に進むか」を考えるようになりました。ただ、高校時代は部活と勉強で忙しく、真剣に進路について考えずに「理系分野に行けばどこでも数学が得意なことが役に立つかな」と思い、漠然と建築系や化学系の進路を考えていました。最終的には慶應義塾大学理工学部学問4(現在の学問Dに近い分類で機械系や建築系の分野)に進学したのですが、大学生活を送るなかで「数学の得意を活かすには数学分野に進んだ方がよいな」と思い、大学の特殊な制度を使って数理科学科に進学しました。
そこで現在の専門であるデータサイエンスや統計学に出会い、それがとても面白いと感じてそのまま大学院に進学しました。大学院も今の所属も経済学部なのですが、「経済」と聞くと大学受験の括りでは文系に分類されると思います。ただ、実際は経済学のな分野で数学を多用するので、理系色が非常に強いです。私は高校時代にそのような実情について調べきれずに進路選択を考えていたので、最終的に経済学部の研究者として働くことは全く想像できていなかったと思います。
Q5. 進路実現に向けて努力したことは?
新しいことを学んだときに、その内容を人に説明できるようになるまで咀嚼して理解することを習慣づけていました。高校時代は友人から数学のわからない点を質問されることが多々あったのですが、そのときに説明したこともかなり理解の定着に役立ったかなと思います。
また、高校時代は部活や授業の合間に数学の難しい問題を1日かけて考え、いろんな解法を試して試行錯誤していました。時間勝負の大学受験においては直接的に役立つ能力ではなかったかもしれないのですが、思考力や同じ課題を考え続ける能力はかなり身についたと思っています。
Q6. 今も役に立っている秀英の学びは?
高校時代に怪我で約1ヶ月間部活動に参加できなかったことがありました。当初は気持ちが沈んでいましたが、ちょうど文化祭の1ヶ月前だったため、部活に代わるものとして文化祭の準備に打ち込むことにしました。その結果、充実した文化祭を迎えることができ、大きな達成感を得ました。
この経験を通じて、ひとつのことに集中することも大切ですが、熱意を持って取り組めるものを複数持つことの重要性を学びました。何かでアクシデントや失敗が起きても、別のことにエネルギーを注ぐことで、精神的なダメージを最小限に抑えられると実感しました。この教訓は現在の研究活動にも活きており、ひとつのテーマに固執せず、複数の研究を並行して進めることで、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる環境を作り出しています。
Q7. 高校時代、もっとこうしておけばと思うことは?
職業の選択肢や可能性について、もっと事前にしっかり調べておけばよかったなと思います。私は大学の途中で進路を変更し、結果的には良い選択となりましたが、最初から幅広く情報を集めておけば、よりスムーズに進めたかもしれません。今は昔と比べて、様々な情報が簡単に手に入る時代なので、世の中の職業や働き方について積極的に調べてみると良いと思います。
また、高校時代は数学の勉強に多くの時間をかける一方で、英語の勉強をやや疎かにしてしまったのですが、大学に進学してから、英語が非常に重要なスキルであることを痛感しました。特に理系に進んだ場合、卒業研究等で海外の文献を読む機会が多く、英語の力は必要不可欠です。今振り返ると、もう少し英語も勉強しておけばよかったなと思います。
Q8. いまの仕事に就くきっかけは?
大学院に入って統計学の研究に触れたときに、「数学の力を使って世界初の新しいデータ分析方法を作る」という作業に面白さを感じました。また、自分が大学院生の頃はデータサイエンスブームが始まった頃で、データ分析技術の社会的な重要が高まっていたため、統計学の専門知識を活かせる職業に就きたいなと考えていました。その際に、研究と教育を専門に仕事ができる大学教員(大学での研究者)という職業に魅力を感じ、その進路を目指すことにしました。
Q9. 菅澤さんのこれからの目標は?
研究を通して学術的な貢献をするだけではなく、民間企業との連携を通して研究成果を社会的に還元していきたいと考えています。データ分析の技術は、実際の課題解決に活かされてこそ真の価値を持つと考えていますので、世の中に存在する様々なデータ分析の課題に取り組み、実際に解決へと導くプロジェクトを進めていきたいと考えています。
また、データから適切な情報を引き出す力は、今後の社会において誰もが身につけるべき重要な素養になると考えていますので、大学教育の立場から、その普及と発展に少しでも貢献できればと思っています。