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秀英便り

2024/4/10

 今年は、新学期に合わせたかのように校庭の桜が満開となり、特に入学式の時は見事でした。桜の華やかさと青葉の鮮やかさが共に目に映える季節のすがすがしさを感じることができました。新学期がスタートし、本校では5日に始業式、7日に入学式(高校は午前、中学は午後)を実施しました。

 昨年度、私は始業式、終業式など式典で生徒にいろいろなことを話してきました。今年も校長として伝えたいことを直に生徒に話しかけていきたいと思っています。新年度最初の「秀英便り」は、始業式と高校入学式の私の話を載せることとします。省略しての掲載ですが、秀英がどういう「学び」を目指しているかを少しでもお伝えできればと思っています。

令和6年度 始業式

 アップルの創業者であり、世界のパソコンの先駆者であるスティーブ・ジョブズは大学を中退した後も、大学に潜り込んで面白そうな授業を受けていました。その中で彼はカリグラフィの授業に夢中になり、そこで、何がカリグラフィを見せる秘訣なのかを理解しました。

 それから10年後、美しく多様なフォントさらに字間調整機能をもつ最初のコンピューター、マッキントッシュが誕生したのです。そのフォントの機能は現在のパソコンのベースになっています。

 彼は、いつか役に立つだろうと思ってカリグラフィを学んだわけではありません。さらに、彼がコンピューターについて学ぶことをしなかったら、カリグラフィの知識が活かされることはなかったでしょう。彼が目指すものを追い求める中で、カリグラフィとコンピューターが結びついたのです。全く関係のない二つの点がつながったわけです。

 学びとはこういうものです。特に中学高校大学の学びはたくさんの点を作る学びです。それは将来生きていく上での「引出し」とも言えます。自分が前に進もうとする時、何かに挑戦しようとする時、その「引出し」は大きな支えになってくれます。点が結びついて線になり、それが面となって大きな世界が見えてきます。大切なことは、早い段階から学びの幅を狭めないということです。

 学校には多くの学びのチャンスがあります。それを自分の点、つまり将来の「引出し」にできるかどうかは皆さんの学びに向かう姿勢にかかっています。それが自律ということです。「面白そうだな」と思ったら、自分から積極的に学びに向かっていってください。

高校入学式

 本日皆さんに紹介する言葉は福沢諭吉の言葉です。慶応義塾大学の創立者であり、わが国の思想面での近代史を形作った福沢諭吉に「空想は実行の原素なり」という言葉があります。福沢諭吉の晩年の著作『福翁日記』の中に出てくる言葉ですが、「空想は、物事を実行する出発点になるものだ」という意味です。福沢諭吉は偉大な思想家、教育家として評されますが、彼は偉大なアントレプレナー、つまり起業家でもありました。ヨーロッパとアメリカを訪問し、銀行制度、郵便法、選挙制度など、欧米のさまざまな仕組みを日本に導入する推進役を果たしました。

 本校のスクールミッションは生徒の自己実現を支える教育です。「なりたい自分になる」、将来の自分の夢を描き、それを求めて進んでいく、そういう意欲と能力を生徒の中に育てたいと思っています。もちろん、夢が現実になるとは限りません。それに小さい時ならともかく、高校生にもなって「夢」なんて現実離れしていて言うのも恥ずかしいと感じる人もいるでしょう。

 そこで、思い出してほしいのが、「福沢諭吉はアントレプレナーだった」ということです。もし、福沢諭吉の言う「空想」が現実社会とかけ離れているものなら、起業は成功しなかったでしょう。福沢諭吉の言う「空想」とは実社会とつながるもの、つまり、現実社会につながる未来を描いていくものなのです。だからこそ、アントレプレナーは、社会全体をリードしていくわけです。

 福沢諭吉が「空想は実行の原素なり」と言ったとき、最も重要なことは、自分が追い求めるものを実現させるための努力の一歩を踏み出せるかどうか、その点にあります。まず、「面白そうだな、自分もやってみようかな」とかいう学びのきっかけがあり、そういう気持ちが「空想」という言葉で言い表され、行動につながっていくのです。英語で表現すると If you can dream it, you can do it.(夢を見ることができれば、それは実現する)ということになるでしょうか。実は、これは私が福沢諭吉の言葉を英訳したものではありません。これもある有名な人が言った言葉なのです。ウォルト・ディズニーです。空想から巨大なイノベーションを生み出し、世の中に多大な功績を残した人物です。

 空想する自分を、夢を思い描く自分を肯定し、チャレンジへの目標とエネルギーに変えていってほしいと思います。そういう空想や夢のきっかけになる学びを秀英では見つけられるはずです。

 ただし、どんな優秀な人も迷います、果たして自分がどっちの方向に進んでいいのかわからないということも当然出てくるでしょう。その時は次の言葉を思い出してください。あのアマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏の言葉です。

I took the less safe path to follow my passion.(自分の情熱に従って、無難でない道を選んだ)
アマゾンを創業したジェフ・ベゾスは、自分が情熱を傾けられる選択をした、と述べています。

 自分の目指すものがわからない時、複数の選択肢がある時、自分がどれほど一生懸命になれるか、どれほど面白く思えるか、それを指針として進んでいってほしいと思います。

 よく、自分の生き方が分からないとか、自分の個性がわからないという人がいます。または、今の自分の状況が思い描いていたものとは違う人もいるかもしれません。しかし、自分の生き方がすでに固まっていたら、身動きはとれません。まだ、固まっていないからこそ、自由に自分の将来を思い描き、それにむかって挑戦していけるわけです。

 秀英には、すばらしい仲間がいます。皆さんを支える先生方がいます。秀英高校の3年間で、自分が情熱を傾けられる「夢、空想」を見出だし、将来への自己実現に向かって進んでください。

昭和学院秀英中学校・高等学校
校長 田中尚子

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