秀英便り
10月になり、残暑の中にも秋の気配が感じられるようになりました。
この夏の暑さは尋常ではありませんでした。地球温暖化の影響が日々の暮らしにまで及んできた現実を実感しました。
さて、8月、本校は海外語学研修を4年ぶりに再開しました。
中学3年生は8月2日~15日の14日間、アメリカ、カナダでの語学研修を実施しました。以前高校1年で実施していたものを中3での実施に変更した後、コロナ禍となり、この夏にやっと実施できたというわけです。研修期間は中3であることを考慮し14日間としました。アメリカのポートランド、カナダのバンクーバーとビクトリア、3カ所で合計100名弱の生徒がホームステイをしながら語学研修に励みました。現地校訪問や州議事堂訪問など、それぞれに工夫されたプログラムをこなし、生徒達には貴重な体験となったはずです。
高校では、マレーシア・スウィンバーン工科大学での16日間の語学研修を実施しました。高1、2年の46名の生徒が参加しました。神田外語大との連携事業として実施したこともあり、充実した語学研修ができたと考えます。また、最後の1日はクアラルンプールの観光も楽しめたようです。
来年度はマレーシア・スウィンバーン工科大学の語学研修のほかに、米国または英国の語学研修も検討する予定です。
また、高校1年生は学年で、8月7日~9日、野田で勉強合宿を企画しました。定員100名という枠でしたが、参加した生徒は勉強に没頭した二泊三日だったようです。
この他にも、生徒の皆さんは夏休みにさまざまな体験をしたことでしょう。そこで得たものを成長の糧にしてほしいと思っています。
9月は何と言っても、9月9日、10日に開催された「雄飛祭」です。今年のテーマは「マテリアル」。生徒1人1人が現在の秀英を構築しているかけがえのない存在であることを自覚して、その総力で創り上げていこうという、その意気込みが伝わってくるテーマでした。台風のため前日の終日準備ができなくなったという「想定外の事態」にも雄飛祭実行委員はしっかりと対応し、生徒達も準備不足を補おうと協力しました。秀英の生徒の総力が結集した、すばらしい雄飛祭となりました。
皆が協力して1つのものを創り上げる一体感と達成感! 生徒は雄飛祭でこのことを体験できたはずです。同時に、成功に至る過程にはさまざまな葛藤があったでしょう。それも貴重な経験です。なぜなら、成長するためには葛藤が必要だからです。
2学期の始業式で、私は「みんなちがってみんないい」という金子みすゞの詩の一節を引用し、同じ詩の一節でも、学びが高まることでその解釈が深化していくことを話しました。その際、慶應義塾大学の小論文入試問題も引用しました。この小論文の問題文の出典は『「みんな違ってみんないい」のか?』(山口裕之著)という本です。「みんな違ってみんないい」という考えは多様性を認めるという点ではすばらしいことですが、しかし本当に他者の意見を尊重していることになるのでしょうか。一方で、「正しいものは一つ」という考え方にも問題があります。「人それぞれ」という相対主義も、「真実は一つ」という普遍主義も相手のことをよく理解しようとしない点では似たようなものだとこの本の著者は述べます。そして、「ともに『正しさ』を作っていくということは、そこで終了せずに踏みとどまり、とことん相手と付き合うという面倒な作業です。相手の言い分を受け入れて自分の考えを変えなければならないこともあるでしょう。」と述べ、そうすることで「新たな『正しさ』を知って成長するのです」と説いています。
この本を紹介したのは、二つのことを生徒の皆さんに言いたいからです。
ひとつは、学校という場にはさまざまな人がいます。言い方を変えれば、新たな「正しさ」について考えるきっかけがたくさんあるということを意識してほしいということです。もう一つは読書の勧めです。読書によって、予想もしなかった新たな「正しさ」が発見できるものです。
秀英には、「考える環境」があります。また、5万冊以上の蔵書を誇る図書館があります。
このような環境の中で、成長の機会を秀英は育んでいきます。秀英で新たな自分を発見し、成長していってください。
昭和学院秀英中学校・高等学校
校長 代行 田中 尚子